一人旅
それはしばしば自分探しだとか言われます。
しかし私は思う。
旅に出た程度で自分など見つかるわけがない。
私が知っている旅は、命を極限まで燃やし絶望を見つめながら暗闇を突っ走る。
一見して価値があると思われるものなんていずれは日常に消えていく。
残るのは行ったという事実、脳にあまりにも鋭く突き刺さる感情、それぐらい。
旅なんて所詮その程度のものだと私は考えます。
どうもogoです。
みなさんGWはいかがお過ごしでしたか。
旅行に行きましたか。趣味に明け暮れましたか。実家に帰りましたか。
俺は「風邪風邪一人旅」でした。
今回は俺が過ごした凄惨なGWの模様をお話ししましょう。
この季節の夜は意外と冷えるものです。
みなさんならその程度知ってるんですかね。 俺にはあまりその辺がよくわかっていないんですが。
やはり俺はみなさんとは一足先にシャツとパン一装備で寝ているわけですが、この時期は本当に気をつけなければなりません。
季節の変わり目、これは本当に大敵です。
(なんか暑くね・・・)って思って窓開けたまま、ついでに布団も半分ぐらいしかかぶらずに寝て、結果ガッツリ風邪をひくというのは毎年やらかしてる気がします。
そしてそのたびに反省しているんですが、全く前に進んでいません。
今年も当然やらかして5/3と4はぐったり寝込んでいました。
しかし俺はずっとまえからこんなことを口走ってました。
「GWで伊勢までチャリこいでくるはwwwwwww」
暗がりで思い返す5/4 20:00頃、考える。
無理じゃないか?
想定していたのは5/5 2:00に家を発つこと。 もし体調が本当に悪かったら無理でしたってことにしよう。 そうして寝ました。
そして迎えた午前2時、ogoは考える。
頭が痛い。喉も痛い。あまり熱も下がっていない。
しかし体温を測った時、突然俺の得意な声が響きます。
「伊勢までチャリこいでくるはwwwwwwwwww」
俺はどうすべきか、自分の身を案じて中止するか・・・。
風邪引いて旅をやめるだと・・・?
おもしろくねぇな?
俺は約束した。 何度も得意に喋ってしまった。 今更引くことなんて許されるわけがない。
病み上がりで121km・・・
行くしかないだろう?
そんな感じで旅に出ることに決めました。
この選択は本当に愚かだったと思います。
所詮周りなんてogoの吐く妄言程度にしか思っていないのに、わかっていてもクオリティを追い求めてしまいます。
俺は以前琵琶湖までチャリこいだことがあります。
今思えばそれはなんら誇らしげに振る舞えることではありませんでした。
道はそれなりに平坦な道で大きな道がありしっかり街灯がありました。 確かに京滋バイパスの横を走った時は結構な道でしたが、その程度です。
今回の旅ではもうしょっぱなから疑問を感じました。
必死にこいでいるのに、ずっと一生懸命こいでいるのにあまり進んだ実感が持てない。
(いずれあの山に入って何個も超えないといけないんだよね・・・)
開始20kmほどですが、既に帰りたくなってしまいました。
超えなければならない県は奈良、伊勢もかなり東の方にある、その道程は一体・・・
衛星写真を見るといきなり街が消えて緑だらけになります。
(俺もしかしてまずいことをしているのかもしれない)
やがて街が消えて、辺りは木が増えて道もなんとなく寂れてきました。
たぶん奈良の東の方だったと思います。 地味にキツイ上り坂が延々と続きます。
ここまで休憩無しでやっていたわけですので、さすがに一回休憩を取ろうと思います。
俺は朝だとスーパーなんて開いてるわけないしコンビニが都合よく現れる保証もないことを知っていたため、事前にライフでアクエリ2Lと半額菓子パンを2個買っておいてました。
(あっ・・・)
(あんまり美味しくない・・・)
こいつはそっと袋に戻しておきました。 半額なのも納得できました。
すごい景色でしょう。
たぶんギリギリ奈良ぐらいの場所だと思います。 畑、田んぼ、森、川・・・ただそれだけ。
コンビニはおろかなんの店も見当たりません。このへんの方は一体どうやって生活しているのでしょうか。
やがて三重の名張あたりにさしかかりイオンモールが見え始めた時はとても安心しました。
津まで35kmか・・・
(・・・・・・)
「高原って名前からしてヤバイじゃねぇかよォ!!!!」
こんな場所でした。
様々な山と肩を並べています。 かなり高い位置にいます。
ここまではもうとんでもない坂道の連続でした。
左側が奈良だとすれば三重はほんとに終始こんな感じでした。
油断したら重力で下に落ちそうになるような坂道がずっと続き、上ったと思ったら下り坂、また登り・・・の繰り返し。
遠くの方で(おお~山のてっぺんで風力発電やってんじゃ~ん)って思ったら向こうの方で回ってましたからね。
俺さっきみたあの山のてっぺんにいるんだ・・・ってなりました。
やがて津にやってきても全然道は平坦になることはなく、ずっとこの調子の坂が続きました。
森を抜け村を何個も超えて三重県松阪市にやってきました。 俺はこの市を一生忘れないと思います。
松阪市に入った時、既にやばい気がしていました。
帰る体力が確実に残っていない。
(伊勢まで20km・・・)
朝3時に出発してこの時14時 そして我に返り、冷静に考える。
今まで俺が乗り越えてきた森や村に街灯はあったか?
朝見た月は新月じゃなかったか?
天気予報は曇りじゃなかったか?
待て
本当に危ないかもしれない。
これ以上旅を続けてはならない。
そう確かに感じました。 旅を断念することはしたくない、しかし今はそんなこと言っていられない。
かなりの焦りを感じました。 しかし今俺は大量の水とほんの少しのパンしか食べていない状況。 何はともあれ腹が減ったので小目標の『すき家 松阪市光町店』を定めてひとまずそこに進むことに決めました。
牛丼特盛りを注文し、考える。 どうも踏ん切りが付けられないので、誰かからの後押しが必要だと感じました。
幸いクラリネットパートにはこの無謀な挑戦を事前に伝えてあり、ogo生存報告をちゃんとするように言われてました。
旅に対する絶望を報告すると
(・・・・・・・)
帰ろう。
途中唯一あったルビーオークワとかいうオークワに立ち寄り、これから待つ試練を乗り切る物資の調達とクラパへの土産を買って帰ります。
もってきた葛根湯と栄養ドリンクでさらにドーピングします。
この時18時頃だったと思います。
(日が沈むまでにできるだけ進まないと・・・)
そうはいっても体力はとっくに無くなっており、この時点でもはや少しの坂道も立ち漕ぎする元気は残っていませんでした。
この写真ぐらいが明かりに頼れる限界の時間でした。
辺りは真っ暗でも進むしかありません。 みなさん想像してみましょう。
目を開けても閉じても全く変化の無いほどの暗い森に一人放置されました。 人は誰一人おらず車もめったに通らない。 建物もない。 空を見ると雲がかかっており星も月も一切見えません。 自転車のライトなんてほぼ意味を成さない中スマホを渡されました。 これで家に帰ってね。
めちゃくちゃ怖いですからね。
恐怖の森ってホラゲーがあるじゃないですか。 あれよりはるかに真っ暗な世界を歩きまわることを想像してもらうとわかりやすいと思います。
そんな中7時間ほど動き続けました。
途中怖すぎて立ち漕ぎを繰り返し、こめかみの血管がビクビクして視界が黒じゃない色になることもありました。
遠くの方に耳を済ませると獣の暴れる音やら鳥が飛び立ち鳴く音が聞こえてきます。 何やら白い影が道路を横切ったことが一回ありました。 その度に
(・・・ハッ)
(タイムアルター・・・トリプルスタグネイトッ!!)
みたいなことやってました。
わかる人だけでいいです。
本当にもう一歩も動けないってなった時、途中の溝に横たわるように仮眠を取ったりしました。
初めあぐらで寝てたんですが、獣がガサゴソ遠くの方でやってたんで、そして寒かったんで、獣からも見つからず風を凌げる場所はないかと辺りを見渡したら
(溝があるじゃ~~~~ん)
ってなってしばらくここで寝てました。
まぁこれ以上言っても仕方ないんで結局真っ暗の恐怖と10時間ほど戦い続け明け方7時40分に大阪教育大前駅に着きました。
金曜一限はさすがにサボりました。
みなさん疑問に思っていることに一つお答えします。
携帯の充電どうしてんの?
そう、ずっとカーナビオンで28時間の旅を乗りきれるわけないんですよ。 ポータブル充電器何個も持って行ったのか? そんな金ありません。
前回の琵琶湖の旅で身につけた技術です。
(まずい・・・充電がない 充電無いと帰れないじゃん!! どこか・・・どこかに充電できる場所はないのか・・・)
辺りを見渡してもコンセントなんてあるわけないです。
(そういえば・・・トイレのウォシュレットって・・・)
これは三重県なんちゃら町のJA前のサークルKのトイレです。
そう、ウォシュレットのコンセントを引っこ抜いて充電器ぶっ刺して30分ほど待機するのです。
琵琶湖の時はひどかったですね。
ジョーシンに駆け込み、おっさんの糞と屁の音を聞きながら漂う臭いを嗅ぎながら1時間ぐらい便器に座ってました。
この充電タイムではいつも根源的な疑問に行き着きます。
俺は一体何をやっているんだろう。
そういうわけで旅の途中でそれっぽい店やコンビニを発見した場合
「トイレチェック入りまーす」
と宣言した後、補給場所として使えるかを判断するわけです。
そうして旅から帰って一週間ほど経ちましたが、それ以来咳が止まりません。
帰って来た日はほんとにひどかったです。 起きたらグール顔負けの充血っぷりで目が真っ赤っ赤になってました。
深いブレスを取ると深い咳が出るので、吹奏楽引退をも考えています。
この旅で(俺ここで死ぬのかな)という絶望を何度も味わいました。
肝試しには相当強くなったと思います。
お前らに言えること
三重は本当に、本当に、かなりヤバい場所だから本当に気をつけろ